システム開発 — 2026.10.06

北海道の灯油配送のDX|寒さから残量を読んで回る順番を決める

冬の夜に霜のついた灯油タンクと目盛りのない真鍮の計量計に一筋の光が差しているイメージ
寒さは選べない。選べるのは、切れる前にどの家へ向かうか。

「寒波が来ると、灯油が切れたという電話が朝から続く」

北海道の灯油配送では、冬のたびに繰り返される場面です。

総務省の家計調査によると、札幌市の二人以上の世帯が1年に買う灯油は約615Lで、全国平均の約4.6倍にあたります。

暖房の燃料を家まで届ける仕事は、北海道の冬の暮らしの土台です。

この記事では決まった周期で回る配送から、残量を読んで回る配送へ移る進め方を整理します。

要点:灯油の減り方は、カレンダーではなく寒さで決まります。決まった周期で回ると、寒波の週は予定より早く切れて緊急の配送が増え、暖かい週は満タンに近いタンクへ少しだけ入れて回ることになります。そこで家ごとに寒さ1度あたりの減り方を過去の給油記録から出し、毎日の気温から残量を見積もって次に行く家を決めます。作るのは大きな配送システムではなく、給油記録と気温から行き先の一覧を出す部分です。

灯油の減り方はカレンダーではなく寒さで決まる

同じ家でも、暖かい週と寒波の週では灯油の減り方がまるで違います。

ところが周期で回る配送は、毎週おおむね同じだけ減ることを前提にしています。

ずれがとくに大きくなるのは、冷え込みが厳しい真冬と気温が上がり始める春先です。

真冬には予定より早く切れる家が出て、春先には予定どおり行っても少ししか入らない家が増えます。

どちらも周期と寒さが合っていないことから起きています。

決まった周期の配送で起きている3つのこと

① 寒波で切れて緊急の配送が入る

予定の日より前に切れた家から、朝一番に電話が来ます。

予定にない配送を差し込むと、その日の回り方が崩れます。

② 暖かい週は少しだけ入れて回る

まだ十分に残っているタンクへ、少しだけ入れて次へ向かう。

移動の時間と燃料の割に、運べる量が少ない回り方です。

③ 回る順番がベテランの勘にある

どの家がそろそろ切れそうかは、長く担当してきた人の頭の中にあります。

担当が替わると、その見当ごと失われます。

「寒さ1度あたり何リットル」という考え方

暖房に使う燃料の量は、外の寒さとおおむね比例します。

その寒さを数字にしたものがデグリーデー(度日)です。

基準の気温とその日の平均気温の差を、毎日足し上げて使います。

たとえば基準を18度とすると、平均気温がマイナス2度の日は20になります。

日本の省エネ基準でも、全国を寒さで8つの地域に分けるときの指標に暖房のデグリーデーが使われています。

米国の暖房用燃料の配送では、家ごとに「度日あたりの消費量」を出して配送の予定を組む方法が使われてきました。

家ごとに数字を持つのは、建物の広さや断熱、暮らし方で減り方が家ごとに違うからです。

最初に作るのは「給油記録」の整理

新しく記録を始める必要は、ほとんどありません。

給油の日付と量は、すでに伝票に残っています。

家ごとに次の項目を1つの表にまとめます。

  • 給油した日と量
  • タンクの容量
  • 灯油の使い道(暖房だけか、給湯にも使うか)

タンクに入れられるのは内容積の90%までなので、入れられる上限も家ごとに持たせておきます。

前回の給油から今回までに入った量を、その間の度日で割れば、その家の減り方が出ます。

伝票が紙やExcelに散らばっている場合は、まず1シーズン分をまとめるところからです。

Excelで回してきた台帳を切り替える目安はExcel管理の限界で整理しています。

毎朝「次に行く家」の一覧を出す

前回満タンにした日からの度日を足し、その家の減り方を掛ければ、いまの残量の見込みが出ます。

残りが一定の割合を切りそうな家から順に並べ、地図の上でまとめて回れる順に並べ替えます。

翌日以降の気温の予報を使えば、数日先に切れそうな家も分かります。

給油のたびに実際の量で減り方を計算し直すので、見込みは回を重ねるほど合ってきます。

見込みと実際が大きくずれた家は、空き家になった、入院したといった事情を確かめるきっかけにもなります。

給湯にも灯油を使う家は寒さと関係なく減る分があるため、暖房だけの家とは分けて計算します。

センサーは付ける家を選ぶ

タンクの残量を測るセンサーを付ける方法もあります。

総務省が紹介している新篠津村の実証では、153戸のうち83戸に残量センサーを付けました。

154日間で給油の回数は858回から684回に、配送の日数は96日から61日に減っています。

効果ははっきりしていますが、全戸に付けると費用がかさみます。

減り方の見込みが合いにくい家や、遠くて空振りの痛い家から付けるのが現実的です。

見込みとセンサーは、どちらか一方ではなく組み合わせられます。

担い手が減っても回る配送に

北海道の給油所は、1994年度の3,045か所から2024年度は1,641か所へと、ほぼ半分に減りました。

近くに給油所がない地域ほど、家まで届ける配送は暮らしに欠かせません。

一方で2024年4月からは、運転を主とする仕事の時間外労働に年960時間の上限がかかっています。

人も時間も増やせない中で配送の量を守るには、空振りの給油を減らすのが近道です。

回る順番が仕組みに入っていれば、ベテランでなくても回れます。

運転と記録の手作業を減らす順番は運送業の業務効率化で扱いました。

どこまで既製品を使い、どこから作るか

会計や請求、地図とナビは既製品で足ります。

残量センサーも既製の製品とサービスがあります。

  • 既製品を使う=会計・請求・地図とナビ
  • 自社の形で作る=給油記録と気温から次に行く家を出す部分
  • まず既製品を試す=付ける家を選んだうえでの残量センサー

判断軸は「自社のお客さまと回り方で中身が変わるかどうか」です。

電話やFAXで届く注文を1つの受注表にまとめ、発送の一覧を自動で出した農業・直売の事例は、行き先の一覧を作る考え方として近いものです。

既製品が合わないときに小さく作る考え方は「小さく作る」という選択肢にまとめました。

ここまでのまとめ

北海道の灯油配送のDXで押さえるべき点は4つです。

  • 灯油の減り方はカレンダーではなく寒さで決まる
  • 家ごとの減り方は手元の給油記録から出せる
  • 毎朝、残量の見込みから次に行く家を決める
  • センサーは見込みが合いにくい家から選んで付ける

よくある質問

灯油の配送予定は何から見直せばいいですか?

すでにある給油の記録を家ごとに整理するところからです。給油の日付と量があれば、その間の寒さで割って家ごとの減り方が出せます。新しい機器を入れる前に、手元の伝票から1シーズン分をまとめるだけで見込みの土台になります。

デグリーデーとは何ですか?

その日がどれだけ寒かったかを数字にしたものです。基準の気温とその日の平均気温の差を、毎日足し上げて使います。暖房に使う燃料の量はこの数字とおおむね比例するため、家ごとの減り方を見積もる物差しになります。日本の省エネ基準でも、地域を寒さで分ける指標に使われています。

残量センサーは付けたほうがいいですか?

全戸に付けるより、付ける家を選ぶのが現実的です。総務省が紹介している新篠津村の実証では、残量センサーを付けた結果、給油の回数が約2割、配送の日数が3割以上減りました。減り方の見込みが合いにくい家や、遠くて空振りの痛い家から付けると効果が出やすくなります。

北海道の灯油配送ならではの注意点はありますか?

同じ日でも、配送エリアの中で気温に差がある点です。内陸と沿岸では冷え込み方が違うため、家に近い観測点の気温を使うと見込みが合いやすくなります。また給湯にも灯油を使う家は寒さと関係なく減る分があるため、暖房だけの家とは分けて計算します。

「寒波のたびに緊急の配送が入る」から、ご相談を

Ridge Forge は札幌を拠点に、社内にIT担当がいない北海道の中小企業の業務改善に伴走しています。

配送の仕組みをまるごと入れ替えるのではなく、いまの伝票と回り方のまま行き先の決め方だけを変える進め方を得意としています。

まずは1シーズン分の給油の記録を見せていただき、家ごとの減り方がどこまで読めるかを一緒に確かめます。

業務システムの考え方はシステム開発のページにまとめています。

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