システム開発 — 2026.08.12
苫小牧の物流・倉庫業のDX|既製の在庫システムが合わないとき
「船が着く日は朝から動きっぱなしで、翌日は手が空きます」
苫小牧で倉庫業を営む事業者から、こんな話を聞きました。
苫小牧港は国際拠点港湾に指定され、道内の港湾取扱貨物量のおよそ半分を扱っています。
そこにつながる倉庫や運送の現場には、内陸の物流とは違うリズムがあります。
この記事では既製の在庫システムが苫小牧の現場に合わない理由と、どこから小さく作ると効くのかを整理します。
要点:既製の在庫システムは毎日同じリズムで動く現場を前提に作られています。苫小牧の倉庫は船の入港で繁閑が決まり、保管料の数え方も荷主ごとに違うため、この前提から外れます。ただし作り直すのは全部ではありません。入出庫の記録を1枚に集めるところだけを自社の形で作り、保管料の計算と請求はその記録がそろってから乗せます。現場に入力してもらうなら入力は3項目までに絞れるかどうかが分かれ目です。
既製の在庫システムは「毎日同じリズム」を前提にしている
市販の在庫管理ソフトや倉庫管理システムは、よくできています。
ただしその多くは、決まった量の荷物が毎日入って毎日出ていく現場を想定しています。
入荷の予定が前日に分かり、保管料は全社共通のルールで計算され、扱う荷物の性質もそろっている。
この前提が崩れると、入力の手間だけが増えます。
そして現場は元の紙とExcelに戻ります。
導入したのに使われない状態がどう生まれるかはせっかく入れたツールが使われないにまとめました。
苫小牧の現場が既製品と合わない3つの理由
① 繁閑が船のスケジュールで決まる
入港が集中する週は倉庫が満杯になり、翌週は空きます。
この波は自社の努力で平らにできません。
ところが既製システムの画面は、月ごとに均された数字を見せる作りになっています。
現場が知りたいのは今週あと何パレット置けるかで、月末の平均在庫ではありません。
② 保管料の数え方が荷主ごとに違う
日建てか月建てか。パレット単位か重量か容積か。期の切り方はいつからか。
荷主ごとに契約が違うため、同じ入出庫の記録から違う金額が出ます。
ここが既製品といちばん合わないところです。
結果として請求だけがExcelに残り、担当者しか計算できない状態になります。
③ 温度帯でモノの扱いが変わる
常温と低温と冷凍では、置ける区画も入出庫の手順も違います。
それを同じ「在庫1パレット」として数えると、画面の数字と現場の実態がずれていきます。
最初に作るのは「入出庫の記録」1枚だけ
ここまで読むと全部作り直す話に聞こえますが、そうではありません。
手をつけるのは1か所です。
入出庫の記録を1枚の表に集めることです。
持つ項目は多くありません。
- いつ(日付・時刻)
- 誰の荷物か(荷主)
- 何がいくつ(品目・数量・単位)
- どこに置いたか(区画・温度帯)
- 入りか出か
この5つがそろっていれば、在庫数も保管料も稼働の山も、あとから計算して出せます。
逆にここが紙とExcelと口頭に散っている限り、どんなシステムを買っても手作業は消えません。
数字を1か所に集める考え方は情報を一元管理するはじめ方で整理しています。
保管料の計算は、記録がそろってから乗せる
荷主ごとに違う計算は、あとから足せます。
やることは契約の条件を、言葉ではなく式として書き出すことです。
- 課金の単位(パレット・重量・容積・坪)
- 期の区切り(1日単位・半月・1か月)
- 締めの基準(期首在庫か期中の最大か)
- 入出庫料を別に取るか、保管料に含めるか
この4つを荷主ごとに一度書き出すと、契約書を読み直さずに金額が出るようになります。
ここまで来ると請求書づくりは、確認して出すだけの作業になります。
書類づくりを段階的に自動化する手順は請求書・見積書の作成を自動化すると同じ考え方です。
現場に入力してもらうなら、決めることは3つ
倉庫の記録は、事務所ではなく現場で発生します。
つまり現場が入力できない仕組みは、作っても使われません。
- 入力する項目は3つまでに絞る(日時と担当者は自動で埋める)
- 手袋のまま押せる大きさにする
- 間違えたときの直し方を先に決めておく
3つ目を後回しにすると、一度の入力ミスで現場の信用を失います。
直せない仕組みは、使う人にとって怖い仕組みです。
担い手が減るほど、記録の価値が上がる
もう一つ、道内の物流には避けられない前提があります。
荷役や運転を担う人が減っていることです。
港の取扱量は世界の景気で上下しますが、人の確保は景気が良くても難しくなっています。
ここで効いてくるのが記録です。
どの荷物をどこに置くか、どの順で出すか。
こうした判断は多くの現場で、ベテランの頭の中にあります。
人が減る前提に立つなら、その判断の材料を記録として外に出しておく必要があります。
置き場所と入出庫の履歴が残っていれば、初めて入った人でも同じ判断に近づけます。
属人化をほどく手順は属人化を解消する業務の標準化とAI活用で整理しました。
どこまで既製品を使い、どこから作るか
全部を作る必要はありません。
線引きの目安は次のとおりです。
- 既製品を使う=会計・給与・送り状(様式が外から決まるもの)
- 自社の形で作る=入出庫の記録と保管料の計算(契約が会社ごとに違うもの)
- まず既製品を試す=配車と車両の日常点検(他社と大きく変わらないもの)
外から様式が決まっているものを自作すると、法改正のたびに直す手間を自分で抱えることになります。
逆に自社の契約が絡む計算を既製品に押し込めると、Excelと二重管理になります。
この線引きの一般的な考え方は既製ツールが合わないと感じたら「小さく作る」という選択肢にまとめました。
運送側の日報や点呼記録から手をつける場合は運送業の業務効率化もあわせてご覧ください。
家まで届ける配送の回り方を残量から決める例は北海道の灯油配送のDXで扱っています。
ここまでのまとめ
苫小牧の倉庫・物流のDXで押さえるべき点は4つです。
- 既製品が合わないのは繁閑の波と、荷主ごとに違う保管料の数え方
- 最初に作るのは入出庫の記録1枚。在庫も金額もあとから計算できる
- 契約の条件は言葉ではなく式として書き出す
- 現場が入力する項目は3つまで。直し方を先に決める
よくある質問
既製の在庫管理システムは倉庫業に使えないのですか?
使える部分と使えない部分があります。入庫と出庫を記録して在庫数を出すところまでは既製品で足りることが多いです。合わなくなるのは保管料の計算で、日建てか月建てか、パレット単位か重量かといった条件が荷主ごとに違うためです。全部を作り直すのではなく、合わない一箇所だけを自社の形で作るのが現実的です。
倉庫のシステム化はどこから手をつけるべきですか?
入出庫の記録を1枚の表に集めるところからです。日付・荷主・品目と数量・置いた区画・入りか出かの5項目がそろえば、在庫数も保管料も稼働の山もあとから計算できます。記録が紙とExcelと口頭に散っている状態では、どんなシステムを入れても手作業は残ります。
現場の作業者に入力してもらうコツはありますか?
入力する項目を3つまでに絞ることです。残りは日時や担当者のように自動で埋められます。手袋のまま押せる大きさのボタンにすること、そして間違えたときの直し方を先に決めておくことも欠かせません。入力に時間がかかる仕組みは必ず使われなくなります。
苫小牧の物流業ならではの注意点は何ですか?
繁閑の波を自社で平らにできないことです。入港が集中する週は倉庫が満杯になり、翌週は空きます。見るべき数字は月末の平均在庫ではなく、今週あと何パレット置けるかです。また常温・低温・冷凍で置ける場所と手順が変わるため、在庫を1つの単位でまとめて数えないことも重要です。
「うちの数え方がシステムに入らない」から、ご相談を
Ridge Forge は札幌を拠点に、社内にIT担当がいない北海道の中小企業の業務改善に伴走しています。
既製品に業務を合わせるのではなく、いまの業務の形をそのまま仕組みにする進め方を得意としています。
まずは入出庫の記録と請求の計算を見せていただき、どこを作ってどこを買うかを一緒に線引きします。
業務システムの考え方はシステム開発のページにまとめています。
初回のご相談は無料です。