業務効率化 — 2026.09.02
十勝・帯広の農業法人のDX|作業記録から人件費と圃場別の収支を出す
「誰がどの畑で何時間働いたか、月末に思い出しながら集計しています」
十勝の農業法人から、この話を聞きました。
十勝は一戸あたりの経営面積が平均48.4haで、全国平均の約12倍にあたります。
これは人を雇って動かす経営体になっているという意味です。
この記事では作業記録から人件費と圃場ごとの収支を出すまでを、現場の手数を増やさない形で整理します。
要点:規模が大きくなると、農業の課題は栽培から労務と原価の管理へ移ります。作るのは大きな営農システムではありません。誰が・どの圃場で・何をしたかの3つを残す記録1か所です。この3つがそろえば人件費も圃場別の収支も、あとから計算して出せます。設計の条件はスマートフォンで3回触れば終わることと圏外でも記録できること。ここを外すと収穫期に必ず途切れます。
規模が大きくなると、記録の性質が変わる
家族だけで回していた頃は、記録がなくても頭の中で足りていました。
誰がどこで何をしたかを、全員が知っていたからです。
雇用が入り、機械が増え、圃場が散ると、この前提が崩れます。
十勝は小麦・豆類・ばれいしょ・てん菜を柱とする大規模な畑作地帯で、酪農も乳用牛の頭数が全道一です。
つまり面積も頭数も、人の記憶で管理できる範囲を超えています。
ここから先で効いてくるのは、栽培の技術ではなく記録の設計です。
月末の集計が終わらない3つの理由
① 圃場と作業と人が、別々に記録されている
栽培履歴はノートやアプリ、勤務時間はタイムカード、機械の稼働は本人の記憶。
別々に残っているため、つなぐ作業が毎月発生します。
② 機械の稼働が誰の手元にも残らない
トラクタや収穫機が、どの圃場で何時間動いたか。
燃料費と修理費を圃場に割り当てたいのに、割り当てる材料がありません。
③ 繁忙期は記録が後回しになる
収穫期に入力の時間は取れません。
そして後から思い出して書いた記録は、精度が落ちます。
紙の記録から始める場合の順番は現実的なペーパーレス化の始め方で整理しています。
最初に作るのは「3タップで終わる作業記録」
残す項目を絞ります。
- 誰が(名前を選ぶ)
- どの圃場で(地図か一覧から選ぶ)
- 何をしたか(播種・防除・収穫などから選ぶ)
開始と終了の時刻は、押した時点で自動的に入ります。
つまり入力は3回選ぶだけです。
ここで項目を増やしたくなりますが、増やすほど繁忙期に途切れます。
そしてもう1つ外せない条件があります。
圏外でも記録でき、電波が戻ったときに送られる形にすることです。
圃場で通信が切れる前提を置かないと、仕組みは現場で使われません。
人件費は、記録から計算して出す
作業記録に人と時刻が入っていれば、人件費は計算で出ます。
農業法人の雇用は、形が入り混じっているのが実情です。
- 通年の常雇
- 収穫期だけの季節雇用やパート
- 外国人材
- 経営者と家族の労働
賃金の決め方がそれぞれ違うため、ここは既製品に収まりにくいところです。
逆に言えば、自社の形で作る価値がもっとも高い部分でもあります。
もう1つの効き目は、労働時間の把握です。
繁忙期にどれだけ働いているかが日々見えていないと、気づいたときには上限を超えています。
記録が自動で積み上がる形にしておけば、月の途中で手を打てます。
勤怠と時間の集計をどこから手放すかは勤怠・シフト管理をラクにするもあわせてご覧ください。
収支は「圃場ごと」に見る
作業記録に圃場が入っていると、経費を圃場に割り当てられます。
そこへ資材の投入量と収穫量を足せば、圃場ごとの収支が出ます。
見えてくるのは次の3つです。
- 手間がかかっているのに実入りが少ない圃場
- 作付けを変えたほうがいい区画
- 借地料と移動時間に見合っているかどうか
借地が多い経営では、もう1つ見るものがあります。
圃場までの移動時間です。
移動を1つの作業として記録に入れておくと、遠い区画にかかっている本当の手間が出てきます。
作付けを変えるか、借地をやめるか。
この判断は面積と反収だけでは決められません。
面積で均等に割る方法では、条件の悪い圃場の実態が平均に隠れます。
散在する圃場を抱える経営ほど、この差は大きくなります。
酪農は、残す記録の種類が違う
畑作と酪農を両方持つ経営体では、記録の作りを分ける必要があります。
畑作は圃場が単位になりますが、酪農は牛が単位になります。
- 個体ごとの分娩・種付け・治療の履歴
- 搾乳量と飼料の給与量
- 作業者ごとの担当と時間
ここで無理に1つの画面にまとめると、どちらの現場でも使いにくくなります。
入力の画面は分け、人件費の計算だけを共通にするのが現実的です。
提出を求められたときに効いてくる
記録には、もう1つの使い道があります。
補助金の申請、認証の審査、取引先からの確認。
いずれも「いつ何をしたか」の提出を求められます。
作業記録が残っていれば、探す作業がほぼ消えます。
つまり提出書類は、日々の記録の副産物として出てくるものです。
そのために別の記録を増やす必要はありません。
どこまで既製品を使い、どこから作るか
作る範囲は絞ります。
- 既製品を使う=会計・給与・栽培履歴や防除の記録
- 自社の形で作る=作業記録から出す人件費と圃場別の収支
- まず既製品を試す=気象データの参照、機械の位置情報
判断軸は「自社の雇用と作り方で中身が変わるかどうか」です。
1件ごとに原価を集めるという発想は旭川の家具・木工メーカーのDXと共通しています。
現場で紙と写真が多い業種の進め方は北海道の建設業のDXも近い構造を扱っています。
冬の夜の出動を押すだけで記録に残す例は札幌の除雪業者のDXで扱っています。
任せる作業の見つけ方は「人がやらなくていい作業」の見つけ方で解説しました。
ここまでのまとめ
十勝の農業法人のDXで押さえるべき点は4つです。
- 規模が大きくなると、課題は栽培から労務と原価の管理へ移る
- 残すのは誰が・どの圃場で・何をしたかの3つだけ
- 圏外でも記録でき、後から送られる形にする
- 収支は面積で割らず、圃場ごとに見る
よくある質問
農業法人の作業記録は何から始めればいいですか?
その日の作業を、誰が・どの圃場で・何をしたかの3つだけ残すところからです。開始と終了の時刻は打刻で自動的に埋まります。項目を増やすと繁忙期に必ず途切れるため、最初は3つに絞ります。この3つがそろえば人件費も圃場別の経費も後から計算できます。
圃場ごとの収支はどうやって出すのですか?
作業記録に圃場を持たせておけば、人件費と機械の稼働をその圃場に割り当てられます。そこへ資材の投入量と収穫量を足すと、圃場ごとの収支になります。面積で均等に割るやり方では、条件の悪い圃場の実態が平均に隠れてしまいます。
繁忙期でも記録は続きますか?
入力に時間がかかる仕組みは続きません。スマートフォンで3回触れば終わる形にすること、圏外でも記録できて後から送られる形にすることが条件です。収穫期に途切れた記録は、後から思い出して書くことになり精度が落ちます。
既製の営農アプリと自作はどう使い分けますか?
栽培履歴や防除の記録、会計や給与は既製品で足ります。自社の形で作る価値があるのは、作業記録から人件費と圃場別の収支を出す部分です。雇用の形や賃金の決め方が経営体ごとに違うため、この計算だけは既製品に収まりにくいところです。
「月末の集計が終わらない」から、ご相談を
Ridge Forge は札幌を拠点に、社内にIT担当がいない北海道の中小企業の業務改善に伴走しています。
既製品に経営を合わせるのではなく、いまの雇用と作り方をそのまま数字にする進め方を得意としています。
まずは作業の記録と月末の集計を見せていただき、どこを1か所にまとめるかを一緒に決めます。
業務システムの考え方はシステム開発のページにまとめています。
初回のご相談は無料です。