システム開発 — 2026.08.26

旭川の家具・木工メーカーのDX|一点ごとに違う原価を見えるようにする

暗い工房の作業台に置かれた木材と真鍮の指矩に一筋の光が差しているイメージ
削る手は変えなくていい。変えるのは、削った時間が残るかどうかのほう。

「この椅子、結局いくらかかったのか分かりません」

旭川周辺で家具を作る事業者から、この話をよく聞きます。

旭川市と東川町・東神楽町・当麻町の一帯は、国内有数の家具産地です。

そして産地全体が、大量生産から多品種少量生産・受注生産へと重心を移してきました。

この記事では一点ごとに違う原価をどう見えるようにするかを、工程を増やさない方法で整理します。

要点:既製の生産管理は同じ製品を繰り返し作る計画のために作られています。1台ごとに仕様が違う受注生産に必要なのは計画機能ではなく、1台ごとに原価を集める仕組みです。やることは1つ。製造指示に番号を振り、材料費と作業時間をその番号に紐づけることです。作業時間は書かせるのではなく製造番号と工程を選ばせる形にすると続きます。実績が積み上がるほど見積の精度が上がります。

量産の仕組みは、一点ものには使えない

市販の生産管理システムは、同じ製品を何個作るかを計画するために作られています。

部品を先に手配し、工程を並べ、完成予定を立てる。

この考え方は、同じものを繰り返し作る工場では強力です。

ところが受注生産では、1台ごとに樹種も寸法も金物も違います。

計画を立てる前に仕様が決まらないため、計画機能そのものが空回りします。

結果として入力の手間だけが残り、原価は相変わらず分かりません。

原価が見えない3つの理由

① 同じ製品名でも仕様が違う

同じ型の椅子でも、樹種と塗装と張地で材料費は変わります。

製品名だけで集計すると、儲かった案件と赤字の案件が混ざって平均になります。

② 手間の時間が記録されていない

材料費は伝票から拾えます。

しかし人の手が何時間かかったかは、どこにも残っていないことが多いです。

受注生産では、この人件費が原価の大きな部分を占めます。

③ 材料のロスが製品に紐づかない

無垢材は木取りで必ずロスが出ます。

節や反りを避けた結果、使った量は図面の計算どおりになりません。

この差が製品ごとに違うため、机上の計算では原価が合いません。

Excelに無理をさせている状態のサインはExcel管理の限界にまとめました。

最初にやるのは「製造指示に番号を振る」こと

システムを入れる前に決めることが1つあります。

製造指示に、1台ずつ番号を振ることです。

この番号が、受注と図面と材料と作業をつなぐ合言葉になります。

  • 受注番号と製造番号を対応させる
  • 図面と仕様書に同じ番号を書く
  • 材料の出庫伝票に番号を書く
  • 作業の記録に番号を選ばせる

番号がそろえば、原価は割り算で出ます。

逆に番号がない状態で原価を集めようとすると、どの数字がどの製品のものか分からなくなります。

作る前の整理がなぜ効くのかは「とりあえずシステム化」が失敗する理由で解説しています。

作業時間は、書かせるのではなく選ばせる

職人に日報を書いてもらう方法は、たいてい続きません。

紙に書く手間と、あとで誰かが入力し直す手間が二重にかかるからです。

続く形はこうなります。

  • 工房のタブレットで製造番号を選ぶ
  • 工程(木取り・加工・組立・塗装・仕上げ)を選ぶ
  • 開始と終了を押す

入力は数秒で終わります。

そして分単位の正確さは求めないと決めておくことが重要です。

知りたいのは「この仕様なら組立に何時間かかる傾向があるか」で、1分の誤差ではありません。

正確さを求めすぎた記録は、現場で必ず形だけになります。

木取りのロスは、実際に使った量で残す

材料費は、図面上の必要量ではなく実際に出庫した量で記録します。

そのうえで、次の2つを分けて見ます。

  • 製品になった分
  • ロスになった分

これを樹種ごとに残していくと、仕入れる材の等級を上げるか下げるかの判断が数字でできます。

安い材を買ってロスが増えれば、結果として高くつくこともあります。

その損益分岐は、記録がなければ勘で決めるしかありません。

見積の精度は、過去の実績から上がる

原価が1台ずつ残ると、見積の作り方が変わります。

似た仕様の製品にかかった材料費と作業時間を引いて、そこから組み立てられるようになります。

変わるのは精度だけではありません。

  • 値引きを求められたとき、どこまで下げられるかが即答できる
  • 納期を聞かれたとき、工程ごとの実績時間から答えられる
  • 受けるべきでない案件を受ける前に見分けられる

勘で出した見積は、当たっても外れても理由が分かりません。

だから次に活かせません。

システム化にかかる費用の考え方は業務システムを作るといくら?をご覧ください。

展示会と海外の案件で効いてくるもの

旭川の産地は、国際家具デザインフェア旭川のような大きな催しを持ち、海外の見本市にも出展してきました。

こうした場から来る引き合いには、共通した特徴があります。

仕様が固まる前に、概算と納期を求められることです。

過去の実績が仕様の項目ごとに残っていれば、この段階で数字を出せます。

また注文が入ってから図面を探す時間も減ります。

産地として受注生産に重心を移すほど、記録は営業の道具になります。

どこまで既製品を使い、どこから作るか

全部を作る必要はありません。

  • 既製品を使う=会計・給与・受発注の請求書発行
  • 自社の形で作る=製造番号と、それに紐づく材料費・作業時間・原価
  • まず既製品を試す=図面と写真の保管、在庫の把握

判断軸は「自社の作り方で中身が変わるかどうか」です。

小さく作るという選択肢の考え方は既製ツールが合わないと感じたら「小さく作る」という選択肢にまとめています。

同じ道内の製造現場では函館の水産加工業のDXも似た構造を扱っています。

急ぎの修理が割り込む加工の現場の工程の見える化は室蘭の金属加工・製造業のDXで扱っています。

ここまでのまとめ

旭川の家具・木工のDXで押さえるべき点は4つです。

  • 受注生産に必要なのは計画機能ではなく、1台ごとに原価を集める仕組み
  • 最初にやるのは製造指示に番号を振ること
  • 作業時間は書かせるのではなく、番号と工程を選ばせる
  • 材料は図面上の必要量ではなく、実際に出庫した量で残す

よくある質問

受注生産の家具メーカーに既製の生産管理システムは合いますか?

多くの製品を同じ仕様で作る前提のものは合いません。既製の生産管理は同じ製品を繰り返し作る計画を立てるために作られており、1台ごとに仕様が違う受注生産では入力の手間だけが増えます。必要なのは計画機能ではなく、1台ごとに原価を集める仕組みです。

一点ものの原価はどうやって出すのですか?

製造指示に番号を振り、その番号に材料費と作業時間を紐づけます。番号が受注と図面と作業と材料の共通の合言葉になるため、あとから割り算をするだけで1台あたりの原価が出ます。番号のない状態で原価を集めようとすると、どの数字がどの製品のものか分からなくなります。

職人に作業時間を記録してもらうのは難しくないですか?

書かせるのではなく選ばせる形にすると続きます。製造番号と工程を選んで開始と終了を押すだけにすれば、入力は数秒で終わります。分単位の正確さより、どの製品にどの工程で何時間かかる傾向があるかが分かることのほうが実務では役に立ちます。

見積の精度はどうすれば上がりますか?

過去の実績を残すことです。似た仕様の製品にかかった材料費と作業時間が残っていれば、次の見積はその実績から組み立てられます。勘で出した見積は当たっても外れても理由が分からないため、次に活かせません。実績が積み上がるほど、値引き交渉でどこまで下げられるかの判断も速くなります。

「この1台でいくら残ったのか」から、ご相談を

Ridge Forge は札幌を拠点に、社内にIT担当がいない北海道の中小企業の業務改善に伴走しています。

既製品に作り方を合わせるのではなく、いまの作り方をそのまま数字にする進め方を得意としています。

まずは製造指示の紙と月末の集計を見せていただき、番号をどこに通すかを一緒に決めます。

業務システムの考え方はシステム開発のページにまとめています。

事例と選ばれる理由もあわせてどうぞ。ご相談はこちらから。

初回のご相談は無料です。