システム開発 — 2026.10.16
室蘭の金属加工・製造業のDX|「いつ上がる?」にすぐ答える工程の見える化
「いつ上がるのかと聞かれるたびに、現場へ確認しに行っている」
急ぎの修理を受ける加工会社では、よく見かける光景です。
室蘭は市自らが「鉄のまち」「ものづくりのまち」と掲げる製造業のまちです。
日本製鉄の室蘭地区だけでも、グループ会社と協力企業で約4,000人が働いています。
製造品出荷額等は2020年の統計で約3,380億円と、全道で3番目の規模です。
その周りで部品の加工や製缶、設備の補修を担う会社が仕事を支えています。
この記事では急ぎの修理が割り込む現場で、納期にすぐ答えられるようにするための工程の見える化を整理します。
要点:製鉄所の協力会社の仕事には、設備の不調で急に入る修理がつきものです。割り込みのたびに予定が組み替わるため、納期を聞かれても現場に確認しないと答えられません。最初に作るのは大きな生産管理システムではなく、機械ごとの予定表と工程が終わったら押すだけの記録の2つです。これで割り込みを入れたときに後ろの仕事がどれだけずれるかが見え、その場で納期を答えられるようになります。
割り込みが入る前提で仕事が回っている
製鉄所の設備は、止まると損失が大きくなります。
そのため壊れた部品の修理や作り直しは、すぐに求められます。
協力会社の側から見ると、予定していた仕事の間に急ぎの仕事が入ってくることになります。
しかも同じものを繰り返し作る量産ではなく、図面1枚ごとに中身が違う仕事がほとんどです。
つまり予定は毎日組み替わるもので、立てた計画どおりに進む日のほうが珍しいのが実情です。
ここで必要になるのは、計画を守らせる仕組みではありません。
組み替えたときに何が起きるかをすぐ見られる仕組みです。
納期にすぐ答えられない3つの理由
① 予定がホワイトボードと頭の中にある
どの機械に何が入っているかは、工場のホワイトボードと班長の記憶にあります。
事務所で電話を受けた人には見えません。
② 割り込みでどこがずれるか分からない
急ぎの修理を1件入れれば、その機械の後ろの仕事が押されます。
どれだけ押されるかは、全部の予定を頭の中で並べ直さないと分かりません。
③ 外注と材料の「待ち」が見えない
めっきや熱処理を外に出している間、仕事は工場の外にあります。
戻りの日が誰の手元にも整理されていないと、納期の答えは推測になります。
最初に作るのは「機械ごとの予定表」
予定は案件ごとではなく、機械ごとに並べます。
旋盤・フライス盤・溶接・組立といった単位で、今日と明日に何が入っているかを1画面に出します。
案件ごとの一覧は、営業が確認するには便利です。
ただ割り込みで押されるのは機械の予定なので、機械を軸にしないとずれが見えません。
1件の仕事は、工程の並びとして登録します。
- 切断
- 旋盤
- 熱処理(外注)
- 仕上げ・検査
工程ごとに、どの機械で何時間かかる見込みかを入れておきます。
見込みは最初から正確でなくてかまいません。
ホワイトボードやExcelから切り替える目安はExcel管理の限界で整理しています。
進み具合は「終わったら押す」だけにする
予定表は、実際の進み具合が入らないとすぐに古くなります。
とはいえ職人に作業日報を書いてもらう形は続きません。
工程が終わったときに、機械の横のタブレットで1回押すだけにします。
製造指示書に印刷したQRコードを読み取れば、どの仕事のどの工程かを選ぶ手間もなくなります。
押された時刻がそのまま実績になり、予定との差も自動で出ます。
同じ打刻からは、一点ごとの原価も出せます。
原価の記録の取り方は旭川の家具・木工メーカーのDXで整理しました。
割り込みを入れる前にずれを見る
機械ごとの予定と進み具合がそろうと、割り込みの扱いが変わります。
急ぎの修理を仮に入れてみると、後ろの仕事が何日押されるかが画面に出ます。
押された結果として納期を超える仕事があれば、赤く表示します。
ここで初めて判断の材料がそろいます。
- 急ぎの仕事を入れて、別の仕事の納期をお客さまに相談する
- 別の機械に回せる工程がないかを探す
- 残業や休日の段取りで吸収できる範囲かを見る
ずれが見えていれば、どれを選ぶかは数分で決められます。
そして納期の回答は、電話を受けた人がその場で返せるようになります。
外注と材料の「待ち」も予定に入れる
工場の中の作業だけを並べても、納期は答えられません。
めっき・熱処理・材料の入荷を、それぞれ「待ち」の工程として予定に入れます。
出した日と戻りの予定日を入れておけば、戻りが遅れている仕事が一覧で分かります。
外注先への確認の電話も遅れているものだけに絞れます。
現場の「待ち」をそのまま列にした進捗の画面は、印刷・加工業の事例が近い形です。
技能者が減るほど、段取りの記録が効いてくる
北海道労働局の令和8年7月の統計では、金属加工・溶接の仕事の有効求人倍率は2.52倍でした。
職業全体の0.86倍と比べると、人が集まりにくい仕事であることが分かります。
北海道の職業能力開発計画も、熟練した技能者の高齢化で技能が受け継がれないまま失われることを懸念しています。
図面1枚ごとに中身が違う仕事では、段取りの知恵が人に付いています。
治具の選び方、刃物の当て方、前に同じ部品を作ったときの注意点。
工程の記録に写真と一言のメモを残せるようにしておきます。
同じ図番や似た部品が次に来たとき、前回の記録をすぐ開けます。
見込みの時間も前回の実績に置き換わっていきます。
ベテランが抜けても仕事が止まらない形にする考え方は属人化を解消する業務の標準化で解説しています。
どこまで既製品を使い、どこから作るか
生産管理のパッケージは数多くあります。
ただその多くは、決まった製品を計画どおりに作る工場を前提にしています。
割り込みが毎日入る個別受注の現場では、入力の手間ばかり増えて使われなくなりがちです。
- 既製品を使う=会計・給与・図面(CAD)
- 自社の形で作る=機械ごとの予定表と工程の打刻
- まず既製品を試す=見積書・請求書の作成
判断軸は「自社の工程の組み方で中身が変わるかどうか」です。
既製品が合わないときの考え方は「小さく作る」という選択肢にまとめました。
ここまでのまとめ
室蘭の金属加工・製造業のDXで押さえるべき点は4つです。
- 協力会社の仕事は、割り込みが入る前提で組み立てる
- 予定は案件ごとではなく機械ごとに並べる
- 進み具合は工程が終わったら押すだけにする
- 割り込みを入れる前に、後ろの仕事のずれを見る
よくある質問
個別受注の加工業でも生産管理システムは使えますか?
量産向けのパッケージをそのまま入れると、入力の手間が増えて使われなくなることが多いです。割り込みが多い現場では、機械ごとの予定表と工程の打刻の2つに絞って作るほうが続きます。会計や図面は既製品を使い、予定と進み具合の部分だけを自社の形にします。
急ぎの修理が入ったとき、納期はどうやって答えればいいですか?
機械ごとの予定に急ぎの仕事を仮に入れて、後ろの仕事がどれだけ押されるかを見てから答えます。予定と進み具合が1つの画面にそろっていれば、この確認は数分で終わります。納期を超える仕事が出る場合は、そのお客さまへの相談とあわせて判断できます。
職人に入力してもらうのは難しくないですか?
書かせる形にすると続きません。工程が終わったときに製造指示書のQRコードを読み取り、1回押すだけにします。押した時刻がそのまま実績になるため、日報を書く作業そのものがなくなります。
室蘭の加工業ならではの注意点はありますか?
製鉄所などの設備の不調に合わせて、急ぎの修理が入りやすい点です。予定を守らせることより、組み替えたときの影響をすぐ見られることを優先して設計します。また熱処理やめっきを外に出す仕事が多い場合は、外に出ている間の「待ち」も予定に入れておく必要があります。
「納期を聞かれても即答できない」から、ご相談を
Ridge Forge は札幌を拠点に、社内にIT担当がいない北海道の中小企業の業務改善に伴走しています。
量産向けの仕組みに現場を合わせるのではなく、いまの工程の組み方をそのまま画面にする進め方を得意としています。
まずはホワイトボードの予定と急ぎの仕事が入った日の動き方を見せていただき、どこから見える化するかを一緒に決めます。
業務システムの考え方はシステム開発のページにまとめています。
初回のご相談は無料です。